これまでに申し上げた基本的な考えをもとにして、様々な手技を持って治療を進めていきます。
オステオパシーには大変ソフトな手技が数多くあります。
よくオステオパシーの説明に「ソフトで安全」という文章が書かれていますが、これは間違いです。本当のオステオパシーをしている人ならこんな事は書けません。ソフトだからこそ、細心の注意を払って、医学的知識のもと、正確に行わなければ、思わぬ失敗を招くことがあります。
必要なときに、必要な手技を施して、身体全体をそのときにもっとも最適な状態にするのが、オステオパシーです。
ここではよく行われる手法についてを簡単に解説します。 |
1、直接法 制限に対して直接外力を加えることにより、可動性を正常に回復する方法です。そのことにより、機能障害を改善します。てこの原理を応用して行う方法(力点と作用点が短い短てこ法と長い長てこ法があります)、瞬間に圧力を入れて行う高速低振幅法(スラスト法、つまりボキボキする方法)、メンネルM.Dが始めた1秒に2、3回のリズムで短い振幅を与える方法などがあります(我が国では故・古賀正秀先生が始めたので、古賀技法とも呼ばれています)。
2、間接法 この方法は、むしろ動きやすい方向に動かしていくのが特徴です。つまり、悪い方向に動かすのです。悪い状態を維持しているというのは、身体がその悪い状態を認識していないからということもできます。間接法では、悪い状態を誇張させることによって、脳神経にその状態をインプットし、正常な状態に戻す信号を出すようにし向けます。そのことにより機能障害が改善します。次に述べるストレイン&カウンターストレインも間接法のひとつです。
3、ストレイン&カウンターストレイン 緊張した筋肉はそれ以上伸びることができず、そのまま緊張状態が持続します。すると、緊張した筋肉と拮抗的な位置にある筋肉との間にアンバランスが生じ、痛みなどが生じます。ストレイン&カウンターストレインは、緊張した筋肉を見つけるために圧痛点Tender Pointを探し、その点をモニターしながら緊張部位を最大限にゆるめた位置で90秒程度維持し、緊張した筋肉と拮抗的な筋肉のバランスを取ることにより、痛みなどから解放させようというものです。ジョーンズ博士が開発したものです、大変普及している手法で安全ではありますが、緊張がゆるむポイントを探すのに優れた触診力が必要です。触診力と解剖学的知識がなければ、いくら行っても効果は上がりません。この手法は、リハビリテーションでも行われていますが、名称がアメリカ・日本などで商標登録されているため、ポジショナルリリースセラピーという違う名称で呼び表しています。注・ストレインとは緊張という意味です。カウンターストレインとは緊張を取るという意味です。
4、筋・筋膜リリース 筋膜(筋肉の表面にある膜で全身の筋肉と関連する)の緊張に対して、引き延ばすように直接法を行ったり、あるいは収縮させるように間接法的に行ったりしてバランスを整える手法です。本来はマッサージの技法のひとつですので、オステオパシー以外でも、医療マッサージ、リハビリテーションなどでも応用されます。注・リリースとは解放という意味です。つまり筋と筋膜の緊張を解放するという意味になります。
5、筋エネルギー法 患者さんの力を利用し、それに抵抗しながら筋肉を収縮させ、筋や関節の動きを改善する方法です。患者さんの体力にあわせて行えるため危険性の少ない手法ですが、やはり解剖学的あるいは生理学的知識が必要なことはいうまでもありません。
6、スティルテクニック オステオパシーの創始者であるスティル博士が実際にはどのような手法を用いていたのかは、博士が技法上の文献をほとんど残さなかったため、実はよくわかっていませんでした。これを、ヴァン・バスカーフ博士が、種々の資料を基におそらくはこのようなものであろうとして再現したテクニック。関節の解剖学的構造を考え、可動性を誇張し、中心点を通り逆に動きにくい方向に動かすという、直接法と間接法の両方を特徴を持つ技法です。単純に見える方法ですが、力の方向、関節の構造を熟知していないと効果は出ません。なお、この手法について解説した日本語訳書籍が出ていますが、バスカーフ博士が、その後の研究で内容を変更した部分があるとセミナーで述べられています。従って、セミナーを受講せず本だけ見て治療行為を行っている人は、全員間違った手法を行っているということになります。
7、頭蓋オステオパシー 脳や脊髄を包む硬膜という膜に緊張があったり、脳が納められる頭蓋骨に動きの制限があると(実は、頭蓋骨は目に見えないリズミカルな動きがあります。これをサザーランド博士が発見し研究の末生まれたのが頭蓋オステオパシーです)、脳脊髄液の流れに不調が現れ、全身の神経機能に影響を及ぼし、身体機能が不調に陥ります。頭蓋オステオパシーでは、頭蓋脳\細かな動きの変調を触診で見いだし、調整することにより、その不調を改善します。患者さんにはほとんど頭に触れられているようにしか感じない手法も多いソフトな手技ですが、技術のない人が行うと効果がないばかりか、めまいや吐き気、頭痛、倦怠感、集中力欠如、うつ、様々な痛みなどかえって症状が発生するおそれもあります。
この頭蓋オステオパシーを簡略化し家庭でも行えるようにしたのが、、アプレジャー博士の頭蓋仙骨療法で、我が国では、公的免許を持っていない整体治療家などがよく行っています。
8、靱帯性関節ストレイン法 比較的初期から行われていた手法で、頭蓋オステオパシーを開発したサザーランド博士、創始者のスティル博士に緒を発するといわれています。呼吸を応用する手法や間接法を主に直接法も含まれており、当然、広汎で詳細な解剖学的知識が必要です。もちろその組織の状態をしっかりと確認できる繊細な触診力も必要です。
9、内臓マニピュレーション フランスのバレル博士が始めた手法で、内臓に対するオステオパシー手技です。内臓には呼吸に伴う動きと、自発的な動きがありますが、それらを調整することにより、円滑な内臓機能に調整しようというものです。この手技は少し痛みを感じます。
そのほかにも様々な手法があり、また現在でも開発されようとしています。しかし、どのような手法を行うにしても、前述のオステオパシーの基本的な原理や理念に基づいて行われます。 |
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